獣医師の仕事として、食品衛生監視員について以前(「2018.5.30」、「2020.2.12」)ご紹介しました。
食品衛生監視員は、食品衛生法やその関係法令に基づいて、飲食店や食品工場などの食品取扱施設の監視や指導を行っています。
今般、食品衛生関係法令が改正され、食品を取り扱う事業者は2021年6月から「HACCP」に取り組むことが義務づけられますので、その内容をご紹介します。
〇食品衛生法はなぜ改正された?
<改正の背景>
・前回の食品衛生法の改正から15年が経過し、世帯構造の変化を背景に調理食品、外食の需要増加など食のニーズが変化しました。
・東京オリンピック・パラリンピックの開催や食品の輸出促進を見据え、国際標準に合った食品衛生管理が求められています。
〇HACCPとは?
アポロ計画で宇宙飛行士が食べる宇宙食の安全を高度に確保するために、NASAが食品企業、軍と共同で開発した手法が原点になっており、Hazard (危害), Analysis (分析), Critical (重要), Control (管理), Point (点)の頭文字をとっています。
食品を取り扱う事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理手法です。
国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され,各国にその採用を推奨している、国際的にも認められたものです。
〇具体的な例示は?
ハンバーグを例に挙げると、ひき肉をこねたあと焼き上げる際、十分に加熱がなされずいわゆる生焼けの状態であれば、大腸菌などが死滅せず、食中毒の原因となり得ます。これが「危害要因」であり、この「危害要因」を「除去低減」するために一定温度以上で一定時間過熱し、肉汁が赤ではなく透明になったことを確認する必要があります。この加熱工程が「特に重要な工程」であり、重点的に管理し、必ず記録として残します。
〇HACCPを取り入れることで何が良くなる?
従来の最終製品の抜き取り検査による衛生管理と比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能となります。
また、HACCPは食品を輸出するときの要件となることがあるため、食品を輸出する際に有利になります。
〇食品衛生監視員の役割
事業者に対し、「危害要因」の分析が十分にできているか、「特に重要な工程」の管理方法は適切かなどを指導・助言します。食品の種類や施設の設備、従業員の人数など、個々の施設毎に衛生管理方法が異なるため、個々の施設に合った指導・助言をする必要があります。
関連トピックスのバックナンバー
動物に触らない獣医さんの仕事-食品衛生監視員-2018.5.30
ふぐの食中毒を防ぐ獣医師の仕事-食品衛生監視員その2-2020.2.12