食中毒の話-腸管出血性大腸菌O157-

2017年10月10日

 今年の夏、関東近県で特に腸管出血性大腸菌による患者が急増し、複数の食中毒が発生しました。

 腸管出血性大腸菌は、他の食中毒に比べると感染力が非常に強く、重症化すると最悪の場合死に至ることがあります。

 腸管出血性大腸菌とはどんなものか、家庭での食中毒予防法など、過去にも取り上げた話題ですが改めてご紹介します。

 

〇腸管出血性大腸菌ってなに?

 大腸菌は、家畜や人の腸内に存在し、ほとんどのものは無害ですが、一部に人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすものがあり、病原性大腸菌と呼ばれています。

 病原性大腸菌の中に、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。

 

○「O157」ってどういう意味?

 大腸菌は、菌の表面にあるO(オー)抗原とH抗原により細かく分類されています。

 「O157」とは、157番目に発見されたO抗原を持つという意味です。

 さらに細かく分類すると、O157でも毒素を産生し重篤な症状を起こすものは、H抗原が「H7」(O157:H7)と「H-(マイナス)」(O157:H-)の2種類があります。

 

○腸管出血性大腸菌の特徴

 ① 感染力が強い

   細菌による食中毒は通常100万個程度の菌数を摂取して発症しますが、
   腸管出血性大腸菌は10~50個程度の少ない菌数でも発症します。

 ② 強力な毒素を作り出す

   出血を伴う腸炎やHUSを引き起こす「ベロ毒素」を作ります。

 ③ 潜伏期間が長い

   汚染された食品を食べてから2日以上、人によっては14日以上も後に
   発症することがあります。

   このため、食中毒の原因食品や感染源の特定が難しい場合があります。

 

○主な症状

 下痢、血便、腹痛、発熱、おう吐

 重症化した場合はHUSや脳症(けいれん、意識障害)などの重篤な合併症を
 発症することがあります。

 抵抗力の弱い乳幼児や高齢者では注意が必要です。

 

○主な原因食品

 牛肉及びその加工品、生野菜、漬物、井戸水など

 

○家庭での予防ポイント

 腸管出血性大腸菌はサルモネラや腸炎ビブリオなどの食中毒菌と同様に、加熱や消毒薬により
 死滅しますので、通常の食中毒対策を確実に実施することで十分に予防可能です。

 

 食中毒予防の基本は、菌を「つけない」、「増やさない」、「やっつける」の3原則です。

 ① 食品の取扱いをする前後やトイレを利用した後には、手洗いと消毒を徹底しましょう。

 ② 食肉は中心まで十分に加熱してから食べましょう。中心温度75℃以上で1分以上の
   加熱が目安です。

 ③ 生で食べる野菜はよく洗ってから調理しましょう。

   100℃のお湯で5秒程度湯がくのも、効果的です。

 ④ 調理前・調理後の食品は室温に長く放置するのはやめましょう。

   冷蔵庫で保管し、温かい料理はしっかりと再加熱してください。

 ⑤ 加熱調理後の食品が二次汚染を受けないよう、調理器具の使い分けや、十分な洗浄と
   消毒を行いましょう。

 

 食中毒を疑う症状が出た時、自分の判断で下痢止めなどを飲むと、
 かえって重症になってしまう恐れがあります。

 安静にし、水分補給につとめ、早めに医師の診察を受けましょう。

 

・厚生労働省「腸管出血性大腸菌O157等による食中毒」

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/daichoukin.html

 

・政府広報オンライン「食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」

http://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/index.html

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