家庭内で生活するペットにとって、食物以外のものを口にしてしまうことは珍しいことではありません。今回はよくペットが口にしてしまって問題となる「異物達」をご紹介したいと思います。
食べてしまって問題になるものは大きく分けて二つのグループに分けられます。一つめのグループには物理的に腸閉塞をおこしたり、消化管を傷つけたりしてしまうものがあります。実例としては布やボール・スーパーボール、おもちゃ、桃・梅などの種、焼き鳥の串、針、画鋲、ひも、ビニールなどがあげられます。レントゲンに写る金属製異物は診断が容易ですが、それ以外のものは診断が困難なものも少なくはありません。この場合は造影検査や試験開腹などをしなければならない場合もあります。
中でも「ひも」は大変危険な異物で、猫がじゃれて遊んでいるうちにかみ、飲み込んでしまいます。もともと腸管は蠕動運動といって伸びたり縮んだりして食べ物を先に送っています。ところが、ひも状の異物を飲み込むと、消化管がひもによってたぐり寄せられてしまいます。すると腸はアコーディオンのように縮まって動けなくなってしまうとともに、傷ついてしまい、腹膜炎などを起こしてしまいます。食欲や元気がなくて、口や肛門からひもが出ている場合は急いで動物病院にいきましょう。
もう一つのグループは食べることによって中毒を起こしてしまうものです。食べることによって消化管の粘膜が刺激を受けてしまう乾燥剤や石けんなどの刺激物はその一つです。
また以前のトピックでもご紹介したα-リポ酸や人間の薬、ネギ、たばこなどのように摂取後、吸収されて中毒を起こすといったものもあります。カーテンのおもりの鉛、メッキ(亜鉛)などをかじることによって重金属中毒になるインコやウサギの症例も報告されています。人の感覚では少量でも体の小さな鳥などにとっては危険になる事があるのです。
ひとつ気に留めておかなければならないのは、ペットが異物を食べてしまったことに飼い主さんが気づいていないケースがほとんどだという事です。食欲不振、繰り返す嘔吐、元気消失、なおらない下痢などの症状がある場合はお早めにかかりつけの獣医さんの診察を受けましょう。
では、異物を食べてしまったのを見つけたらどうしたらいいでしょう?その場合は食べてしまったものの情報(製品名、できればパッケージ、いつどれくらい食べたのか?などなるべく詳しく)をもって獣医さんにご相談ください。
治療は軽度の場合は粘膜保護などの内服薬ですむものから開腹手術で腸管や胃を切開して異物を摘出しなければいけないものまであります。
ペットを異物から守るためにはこれら口にしそうなものは放置しないで片付けるように家族で話し合いをして予防しましょう。