猫がトイレ以外で行う困った排泄には、大きく分けると2つの種類があります。
1つは布団やカーペットなどの決められた場所以外でする「不適切な場所での排泄」で、
もう1つは縄張りや繁殖活動で自分の存在をにおいで示す「マーキング行動」です。
いずれも尿で行うことが多いですが、便のこともあります。
これらの行動は人にとっては非常に困惑させられるものですが、
猫自身も涼しい顔をしてやっているわけではなく、不安やストレスを抱えてやむをえず
していることが多いですから、是非、解決に向けて取り組んでいきましょう。
(1)始めにトイレについて見直しをしてみましょう
トイレ以外での排泄を解決する上で、まずトイレ環境を整えることは何より大切です。
一般的に猫がトイレを気に入っていない時によくみられるしぐさとして、
トイレの器や周囲の床をしきりにひっかく、砂をかかない、排泄中もトイレのふちに
足を乗せて中に入ろうとしない、トイレに行っても用を足さずに引き返す、
などがあります。
このようなしぐさがみられたら何かしらトイレに問題点があるかもしれませんので、
以下の点をチェックしてみましょう。
□ 掃除をまめにやって常にきれいにしているか。
□ 数は猫の頭数より多くあるか。
□ 置き場所は食事や休憩場所に隣接していないか。
□ 大きさは猫にとって窮屈でないか。
□ 砂の種類は猫の好みに合っていて、量は十分入っているか。
□ トイレの掃除をする時、におい付きの消臭剤を使っていないか。
□ 屋根つきのトイレか。
トイレの掃除は1日に2~3回行い、
猫がトイレを使うときに前の排泄物が残っていないようにしておくことが理想です。
数は、猫の頭数プラス1個以上用意し、それぞれ離して置きます。
場所は、静かで人通りが少なく物陰になっている所がよく、
食事や休憩場所からある程度離します。
トイレの大きさは、猫の体より大きいものにして、ゆったりと使えるようにしましょう。
砂は、むやみに種類を変えず、猫が気に入ったものをずっと使うようにしましょう。
多くの猫に好まれる砂は、細かい粒である程度の重さがあり尿で固まるタイプのものです。
どんな砂が好みかわからない場合は、複数のトイレに別々の砂を入れ、どの砂を好むか
観察しましょう。砂の深さは3cm以上にします。
掃除の際、におい付きの消臭剤はいやがるので使わないようにします。
屋根つきのトイレは、猫が隠れて排泄できる長所がある反面、中ににおいがこもりやすく
それを嫌う猫もいますので、自分の猫に合っているか注意深く判断しましょう。
(2)次に、「不適切な場所での排泄」に関してチェックしていきましょう
□ 不適切な排泄をされた布団やカーペットなどをそのまま使っていないか。
□ 同居の猫に普段からいじめられたり、排泄時に邪魔されたりしていないか。
□ トイレ使用中に大きな音がしたなどで怖い体験をしたことはないか。
□ 飼い主さんの留守が増えたか。
□ 失敗に対し、叱ったり体罰を加えていないか。
□ 血尿、便秘、尿量増加、関節痛などの病気の症状はないか。
布団やカーペットなどに浸み込んだ尿のにおいは、普通に洗濯しただけでは残ってしまい
再発を誘発してしまいます。そのようなものは可能であれば処分をするか尿のにおいを
分解する酵素系の洗剤を使って十分洗いましょう。
しばらくの間ビニールで覆ってしまうのも有効です。
失敗した布団やカーペットの切れ端をトイレの中に入れておくと、再びトイレに誘導できる
可能性があります。また、猫は排泄と食事を同じ場所ですることを嫌いますので、
失敗した場所であえて食事を提供すると再発防止につながるかもしれません。
同居の猫にいじめられている場合、その猫は人が想像する以上にストレスを受けている
可能性があります。
部屋を分けて隔離し、安心してトイレが使えるようになるまで見守ってあげましょう。
トイレの最中に怖い思いをした場合、そのトイレを使わなくなることがあります。
猫が安心できる場所にトイレを新設したり、今使っているトイレを移動してみましょう。
飼い主さんの留守には、留守番の練習をするとよいでしょう。
徐々に留守番の時間を延ばし慣れさせます。留守番中に、遊んでいると中に入れたフードが
出てくるおもちゃを利用して気を紛らわせるようにするとよいでしょう。
普段からリラックス作用のあるフードやサプリメントを給与するのも
効果があると思います。
不適切な排泄をしてしまっても、声で叱ることや体罰は行わないようにします。
叱られると猫は排泄を我慢したり飼い主さんを怖がるようになり、
さらに状況が悪化することが多いのです。
病気で不適切な排泄をすることもありますので、その疑いが感じられた場合は
もちろんですが、そうみえなくても一度は診察を受けておくとよいでしょう。
高齢などで運動障害があれば、出入口が低くて入りやすいトイレに変更します。
(3)「マーキング行動」を行っていないかどうかもチェックしてみましょう
□ 排尿時に立ったまま壁や家具などに向けて少量の尿をするか。
□ 家に新しい猫が加わったか。
□ 部屋の模様替えや引っ越しをしたか。
□ 新しいカバンや靴、他人の荷物などを部屋に持ち込んでいないか。
□ 窓の外に猫の姿が見えたり、外から猫の鳴き声が聞こえたりしないか。
□ 去勢・不妊手術をしているか。
しゃがまずに立ったまま尾を高く上げ壁などの垂直面に尿を吹き付ける行動は、
スプレーと言われる典型的なマーキング行動です。特に未去勢の雄に多いですが、
去勢済みの雄や雌猫(主に発情中)もすることがあります。また、不安やストレスを
感じている時に自分を落ち着かせるためにすることもあります。
新しい猫を飼い始めた時や3頭以上の猫を飼育している家では発生の可能性が高まります。
新たな猫を迎え入れる時は先住猫とすぐに一緒にしないで、時間をかけて少しずつ
対面をさせるとよいでしょう。また、新しい猫に人の関心が向きがちになりますので、
先住猫への配慮もおろそかにならないようにします。
多頭飼育の家では、それぞれの猫にくつろげる居場所を確保し、
さらに住空間をキャットタワーや家具などを利用して立体的に広げてあげるとよいでしょう。
模様替えや新しい家具の設置あるいは引っ越しの際には猫は非常に不安を感じますので、
猫の隠れ場所をしっかり確保した上で行います。
部屋に新しいカバンや靴などのこれまで嗅いだ経験のないにおいのついたものを
持ち込んだ時もマーキング行動は誘発されますので、対象物をしまうなどの対応をします。
外の猫が影響を及ぼしている場合は、窓に目隠しをしたり家の敷地に猫が
近寄れなくなるような工夫をします。
去勢手術や不妊手術を受けていない猫では、手術をすると9割以上の猫で
マーキング行動はなくなるか軽減しますので、手術をすることも考慮に入れてみてください。
その他の対策として製品化された猫のフェロモンを利用すると、猫はその場所には
自分のにおいが十分付いていると錯覚し、マーキング行動をしなくなるかもしれません。
猫のトイレ以外での困った排泄行動は、1つの原因で起こるよりも複数の原因が重なって
起こることが多いので、考えられる原因に対し同時に対策を立てることが大切です。
以上、述べたことの中で思い当るところがあればぜひとも対処してみてください。
なかなか改善しない場合は、病気のことではないから…と遠慮することなく
動物病院に相談してみましょう。動物病院では、より効果的な対処法についてアドバイス
してもらえるかもしれません。
また、もし猫が強い不安を抱えていて他の方法でそれを緩和することが難しければ、
抗不安剤などの薬物療法を提案してもらえるかもしれません。