猫は、日常生活で、何らかのストレスを感じていても、それをなかなか表情や動作に表すことがありません。そのため、毎日一緒にいる飼い主さんでも、自分の猫がストレスを抱えていることに気づいてあげられないかもしれないのです。
人との古くからの交流を通して、猫は、人との生活にかなり順応していますが、今でも、猫本来の野生的な習性を失っている訳ではありません。猫のストレスは、猫にとって何かと不自由の多い人との生活の中で、その習性を抑圧され、自分の思い通りに行動ができないと生じやすくなるのです。
したがって、飼い主さんは、普段から猫にストレスがないか気を配ると共に、猫がのびのびとリラックスして過ごせるよう、猫の習性に配慮した生活空間を用意してあげることが大切です。
猫の習性に配慮した生活空間とは 、どのようなものでしょうか。
1. 隠れ場所
猫は目の前に敵が現れると、敵に立ち向かうのではなく逃げる習性を持っています。急な来客や不審な音などで怖い思いをした時に、すぐに避難できる安全な場所を、段ボール箱などを利用して用意しておいてあげましょう。
何かあった時に隠れられる場所があることは、大きな安心感につながります。
2. 高い位置にある休憩所
猫は、高い所に登って縄張りを上から監視することを好みます。隠れ場所とは別に、やや高い位置に居心地の良い休憩所を作ってあげましょう。
そこから外の景色も見えると、なお良いと思います。
周囲が盛り上がった柔らかいクッションを置いてあげれば、猫は高い所で身を隠した気持ちになって、そこはきっとお気に入りの場所になるでしょう。
3. 運動スペース
猫がある程度走り回れるくらいの床スペースがあると良いでしょう。同時に、上下にも移動できるように家具の置き方を工夫して、タンスの上などに登れるようにするとさらに運動スペースは広がります。
多頭飼育では、スペースが広がることでそれぞれの距離を保ちやすくなり、過密によるストレスを減らすことにもつながります。
4. トイレ
自然の中では広い排泄場所がありますが、家の中では用意されたトイレを使うしかありません。当然ながら汚れたトイレでは猫も嫌がりますので、排泄物はこまめに掃除し、気持ちよくトイレが使えるようにしましょう。
トイレの大きさは、猫がゆったりと入れるものにして、数はできれば猫の数よりも多めに用意します。人が良く通る所や洗濯機のように音がするものの近くには置かないようにしましょう。
砂は、猫が気に入っていれば、むやみにその種類を替えないようにします。
砂の飛散防止のカバーは、便利ですが、中に臭いがこもるので、猫が嫌がってないか良く見てあげましょう。
5. 食事場所
食事場所は、トイレから十分離して、静かで落ち着ける場所にします。
多頭飼育では、皿は一頭ずつ別々に用意して、それぞれの置き場を離してあげると、食事を巡る争いを減らすことができます。
6. 爪とぎ
爪とぎ用の道具を複数置いてあげましょう。
猫が爪とぎをすると、足先からフェロモンが出て、そこに自分の臭いを付けることができます。また、柱や家具などにも顔や尾をこすり付けて、同じようにフェロモンを付着させます。
これらの行動は、自分の縄張りを示すためにしており、結果的に猫の満足感や安心感を高めます。
7. おもちゃ
家の中では、狩の習性を満足させるために、おもちゃでたくさん遊んであげましょう。猫それぞれに専用のおもちゃを用意して、猫同士で奪い合いが起こらないように気を付けましょう。
また、おもちゃの誤飲事故は少なくありませんので、くれぐれも注意しましょう。