本年5月の新聞記事で話題になりましたが、ペットを飼っている飼い主さんでも耳慣れない言葉です。
カプノサイトファーガ感染症はカプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌による感染症です。この細菌は犬や猫の口腔内に常在しています。家庭で飼えなくなって自治体に引き取られた犬や猫を調べてみると、犬の74%、猫の57%からこの細菌が見つかっています。
人への感染は犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりしておこりますが極めて稀にしか発症しないと考えられています。ただし、抗がん剤での治療中の人や基礎体力が落ちている高齢者など、免疫機能の低下している人は重症化する場合があります。人の場合も動物の場合も発見しても報告の義務はありませんが、重症例などで文献報告された例が2002年から2009年までで14例あります。重症例での症状は敗血症や髄膜炎などで、このうちの6人が死亡しています。
動物の場合、保菌していても殆ど症状は出ないので、家庭で飼育されている犬や猫がこの細菌を持っているかどうか外見上はわかりません。しかし犬や猫を飼うときの一般的な注意、すなわち犬や猫の世話をした後は手洗いをする。口移しでえさを与えるなどの過剰なスキンシップをしない、などの注意をすれば感染の可能性は大変小さいと言えます。
犬や猫での感染の有無を調べる検査はまだ一般的ではなく、一部の研究施設でのみ可能です。