ワンちゃんには犬種特有の病気、すなわち遺伝性疾患があることをご存じでしょうか?
近年人気の高いミニチュア・ダックスフンドに椎間板ヘルニアが多いことは比較的よく知られています。
遺伝性疾患とは、遺伝子が変異することによって引き起こされる病気のことで、変異した遺伝子(疾患原因遺伝子)が親から子へ引き継がれることによって病気が遺伝していきます。
シドニー大学がインターネット上に公開している様々な動物の遺伝に関する情報サイトOMIAによると、現在、遺伝子異常が明らかな犬の疾患や形質(毛の色などの特徴)は211あり、そのうち約50の病気で遺伝子診断が可能と言われています。
犬の遺伝性疾患は、実際には、アレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患や、膝蓋骨脱臼などの骨関節疾患、僧帽弁閉鎖不全症などの心疾患が大半を占めますが、これらの疾患のほとんどが慢性、再発性で、程度の差はあれ、生涯にわたる治療が必要なことが少なくありません。
日本は世界でも突出して犬の遺伝性疾患が多い国と言われております。
その原因としては、映画やテレビなどのマスメディアの影響を受けて特定の犬種に人気が集中し、その需要によって無秩序な生産(繁殖)が横行していることが指摘されています。
遺伝性疾患は一定の遺伝形式によって子へ引き継がれていきますので、疾患原因遺伝子を持っている犬に必ず病気が発症するとは限りません。
実際には無症状でも、疾患原因遺伝子を持っている親同士を交配した場合、子が発症する確率は25%ありますので、疾患原因遺伝子を持っている犬を繁殖に使い続けているといつまでたっても病気の犬がいなくなることはありません。
遺伝性疾患を少なくするためには、可能な限り親犬の遺伝子検査を実施して、疾患原因遺伝子を持っている犬を繁殖に使わないことがとても重要となります。
ただし、現在利用できる犬の遺伝子検査はごく一部に限られていますので、遺伝性疾患が指摘されている病気を発症している犬は、できるだけ繁殖計画から除外することが望ましいと言えます。
国内の大手ペット損害保険会社が2016年に発表した人気犬種ランキングベスト10をもとに、代表的な遺伝性疾患を以下にまとめましたので、これからのワンちゃん選びや交配のときの参考にして下さい。
*遺伝子異常が明確にされていない病気、検査法がない病気、まれな病気も含まれています。
また、これらのなかに記載されていない病気もあります。
詳しいことはかかりつけの獣医師にご相談下さい。
1位 トイプードル
アレルギー性皮膚炎、僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症、肺動脈狭窄症、
門脈体循環短絡、気管虚脱、水頭症、若年性白内障、進行性網膜萎縮、
流涙症、膝蓋骨脱臼、環軸関節不安定症、大腿骨頭壊死症、変性性脊髄症、
甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、無菌性結節性脂肪織炎、停留精巣、
フォンウィルブランド病、GM2ガングリオシドーシス、ムコ多糖症
2位 チワワ
僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症、肺動脈狭窄症、気管虚脱、進行性網膜萎縮、
乾性角結膜炎、膝蓋骨脱臼、環軸関節不安定症、大腿骨頭壊死症、停留精巣、水頭症
3位 ミックス犬(体重10kg未満)
正確な情報がないため省略します。
4位 柴犬
アレルギー性皮膚炎、外耳炎、若年性白内障、膝蓋骨脱臼、GM1ガングリオシドーシス
5位 ミニチュア・ダックスフンド
皮膚疾患(アレルギー性皮膚炎、パターン脱毛、耳介血管炎、若年性濃皮症など)、
椎間板ヘルニア、環軸関節不安定症、骨形成不全症、僧帽弁閉鎖不全症、
動脈管開存症、肺動脈狭窄症、進行性網膜萎縮、無菌性結節性脂肪織炎、
甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、停留精巣、神経セロイドリポフスチン症、
ムコ多糖症
6位 ポメラニアン
僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症、気管虚脱、膝蓋骨脱臼、環軸関節不安定症、
水頭症、停留精巣、流涙症、グリコーゲン貯蔵症
7位 ヨークシャー・テリア
アレルギー性皮膚炎、僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症、門脈体循環短絡、
気管虚脱、膝蓋骨脱臼、大腿骨頭壊死症、環軸関節不安定症、若年性白内障、
乾性角結膜炎、流涙症、副腎皮質機能亢進症、停留精巣、水頭症
8位 ミニチュア・シュナウザー
アレルギー性皮膚炎、僧帽弁閉鎖不全症、若年性白内障、進行性網膜萎縮、
尿石症、高脂血症、先天性筋緊張症
9位 シー・ズー
皮膚炎(アレルギー性、脂漏性)、外耳炎、第三眼瞼腺脱出、乾性角結膜炎、
流涙症、進行性網膜萎縮、僧帽弁閉鎖不全症、椎間板ヘルニア、臍ヘルニア、
プレカリクレイン欠乏症
10位 マルチーズ
アレルギー性皮膚炎、僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症、気管虚脱、流涙症、
膝蓋骨脱臼、停留精巣、水頭症、グリコーゲン貯蔵症