犬の緑内障について

2024年5月16日

皆さんも日常の中で眼に違和感を覚えることがあると思いますが、その原因のひとつに緑内障という病気が存在します。

人の緑内障は日本の中途失明原因の第1位であり、日本人の40歳以上では20人に1人は罹患していると言われています。また、適切な治療を受けなければ失明に至り、それは犬においても例外ではありません。そこで犬の緑内障について改めてご紹介します。

 以前緑内障は眼圧が上昇する疾患と思われていましたが、今では高眼圧などの病態により神経への循環悪化や、神経が障害されることにより、外から得られた光情報を脳へうまく伝達できない状態のことを指します。症状が進行すると最終的には失明し、視力が回復することは難しいです。にもかかわらず緑内障が発症しやすい犬種は50種類以上も知られており、根本に遺伝が強く関与していると考えられています。

緑内障は様々な原因により発症し、その発症原因により下記の4つに大別できます。


① 原発開放隅角緑内障
解剖学的に、眼の栄養供給の役割を担う眼房水の流出障害を起こす明らかな要因が認められない緑内障で、犬での発症は珍しいです。初期段階では眼圧の上昇が軽微ですが、症状が進行すると眼圧が著しく高くなります。

② 原発閉塞隅角緑内障
眼房水の流出部が虹彩や水晶体の異常により流出しにくくなる緑内障で、診断には隅角検査が必要になります。また、犬の緑内障の中で最も発症が多く、好発犬種として柴犬やアメリカン・コッカ-・スパニエルなどがあげられます。

③ 続発緑内障
眼内に緑内障以外の病気があり(ぶどう膜炎、水晶体脱臼、前房出血、眼内腫瘍など)、それが原因となって発症する緑内障で、片目もしくは両眼に発症します。

④ 先天緑内障
生まれつき複数の異常があることで若齢期に発症する緑内障で、急速に進行することが多く、通常早急な手術が必要になります。

 緑内障の主な症状としては、眼の白い部分(結膜)が真っ赤に充血している、眼をショボショボして細めている、眼の表面(角膜)が急に白くなった、急に物にぶつかるようになったなど様々です。

緑内障の治療は原因によっても異なりますが、視力の有無で選択できる方法が変わってきます。視力が残っているならば視力温存のために眼圧を下げる点眼やインプラントを設置する方法があり、視力が喪失している場合は、緑内障による痛みを如何に緩和するかに重点が変わってくるため、点眼や内服薬だけで対応することもあれば、眼内にシリコンインプラントを入れる方法もあります。

 

緑内障が発症し眼圧の著しく高い状態が1~3日持続すると視力喪失するといわれており、視力喪失のリスクを下げるためには視力がまだ残っている早期の状態での診断・治療が必要になります。緑内障の早期発見の為、眼に出た些細な症状だったとしても早めに受診したり、症状が出る前に定期的な眼圧検査を受けることも大切です。

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