ペットの健康診断は定期的に行っていますか?
最近はペットもヒトと同様に医療技術の向上により、高齢化が進んできました。でも、ペットはヒトと違って自分で具合が悪いことを教えてくれません。飼主さんが気付く症状が出てから治療を始めても、なかなか改善しないことも多いのです。
そこで定期的な健康診断をオススメしています。健康診断には血液検査やレントゲン、超音波検査や場合によってはCTやMRI検査まであります。
さまざまな定期健診の中でとってもお手軽、でも、重要な検査に尿検査があります。
<尿検査で調べること>
尿の色合いや透明度、比重などの理学的検査、pH、尿タンパク、尿糖、出血、ビリルビンなどの化学的検査、さらに顕微鏡検査により尿中の結石や細胞、細菌などを調べます。
<尿検査で分かること>
腎臓病や膀胱炎をはじめ尿路系(腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道)の結石、感染、腫瘍などの病気はもちろん、糖尿病や副腎皮質機能亢進症などのホルモンの病気、門脈体循環シャント(注1)や異所性尿管(注2)などの先天的・遺伝的な病気などの発見につながったり、さらに糖尿病性ケトアシドーシス(注3)や胆管閉塞による黄疸(注4)など全身に影響する病気や、命にかかわる病気の発見につながることもよくあるのです。
特に慢性腎臓病については血液検査よりもかなり早期に発見ができますので7歳以上のペットにはぜひオススメの検査です。慢性腎臓病は完治することができず、ヒトのような人工透析も現実的には困難な病気です。できるだけ早期に発見し、腎臓を長持ちさせなければなりません。
<尿はどうやって採る?>
ヒトの場合は看護師さんに紙コップを渡され「はい、トイレはこちらで~す。」と言われるだけですけど、ペットはそういう訳にはいきません。
1:自然にした尿を採取する(自宅で採取)
2:カテーテルを入れて採取する(動物病院で採取)
3:膀胱に針を刺して採取する(動物病院で採取)
などの方法があります。
ご自宅で採取する方法としてはオスのワンコは排尿時に紙コップ等で受ける、メスのワンコは紙の皿のようなもので受ける、ペットシーツでする子はビニール面(裏面・非吸収面)を上にして敷いておき、そこに溜まったものを採取する方法もあります。
ニャンコの場合はトイレ砂の一部にラップやビニール、ペットシーツの裏面を上にして敷いておき、うまく溜まったものを採取する。トイレが二重底の場合、砂を少量にして下段にペットシーツの裏面を上にして敷いておく方法があります。
棒の先端に吸収スポンジがついた採尿器具もありますので動物病院に相談してみて下さい。
<尿はいつ採る?>
尿検査に理想的な尿は朝食前の朝一番の尿で、しかも中間尿(排尿が始まってから数秒してからの尿)です。それをすぐさま検査することが最良です。
ただし、そう簡単にはいきませんから、尿検査の目的に応じて動物病院で相談してみましょう。
<どれくらいの頻度で調べる?>
定期健診であれば3か月に1回程度(ヒトに換算すると1年に1回)がオススメです。ただし、若くて元気な子であれば年1回程度でもよいですし、病気の種類によってはもっと頻繁に調べたほうがいいこともあります。かかりつけの動物病院で相談してみましょう。
いかがでしたか?
尿検査は自宅で採尿すれば痛くありませんし、病院で採取するときもふつうは麻酔も必要ありません(動物が暴れたり過度に興奮する場合は鎮静や麻酔が必要になる場合もあります)。費用も他の検査ほど高くなく、場合によっては尿だけ動物病院に持っていけば検査が可能です。それでいて重要な病気の早期発見につながりますので、コストパフォーマンスも高く、大変有効な手段です。
7歳超えたら尿検査!ぜひお気軽に動物病院へご相談下さい!
注釈
1:門脈体循環シャント・・・通常、腸などからの血液はその栄養や老廃物を処理するため
門脈という静脈によって一度、肝臓に運ばれてから心臓に戻っていくが、老廃物を含んだ
まま肝臓を通らずに直接心臓へ戻ってしまう血管のパイパスができてしまう先天的な血管
の奇形
2:異所性尿管・・・・・・・腎臓から膀胱へ尿を輸送する尿管が、膀胱とつながる時に正
常でない場所につながってしまう先天的な奇形
3:糖尿病性ケトアシドーシス・・・糖尿病が長い間コントロールされずに経過した場合に
ケトン体と呼ばれる老廃物が蓄積し死に至る場合がある病態。
4:胆管閉塞による黄疸・・・肝臓が作る胆汁は一度、胆嚢に貯留された後、胆管を通って
十二指腸に排泄されるが、その胆管に結石や腫瘍などが引っ掛かると胆管閉塞になり、
黄疸や肝不全を発症する