密かに迫るエキノコックス症

2022年8月3日

エキノコックス症をご存知でしょうか。

エキノコックス症とは、主に多包条虫と単包条虫に分類されるエキノコックスと呼ばれる寄生虫の感染により起こり、ヒトと動物に共通する感染症です。
日本では主に北海道のキタキツネが感染源となり、糞便内にエキノコックスの虫卵が排出され、ヒトにはその虫卵が手指や食べ物、水などを介して口から入ることで感染します。北海道ではキタキツネの他に、放し飼いにされた犬も同様に感染源となります。キタキツネや犬は、エキノコックスに感染した野ネズミを捕食することによって感染源となります。

このように北海道で主に発生していたエキノコックス症でしたが、近年、愛知県の知多半島地域においても犬のエキノコックス症の陽性事例が報告されています。2014年3月に捕獲された野犬から検出されてから、2021年3月までの間に累計で9例報告されています。
国立感染症研究所は「知多半島でエキノコックスが定着した」との見解を示しています。現時点で知多半島では蔓延している状況ではなく、今後の動向を注視する必要があります。
ちなみに埼玉県でも2005年に犬のエキノコックス感染が見つかりましたが、その後は他の犬での感染は見つかっていません。

ヒトがエキノコックスに感染すると主に肝臓で増殖します。感染後、肝臓の腫大、黄疸、貧血、発熱などの初期症状が現れるまでに10年以上を要します。
発症後、治療せずに放置すると半年くらいで腹水が出て、やがて死に至ります。

 

エキノコックス症を予防するには・・・

・野生動物や野犬などに餌を与えたり、生ゴミを放置せず、むやみに接触しないようにしましょう。
・野山に出かけた時は、沢や川の水は飲まないようにし、帰宅後はよく手を洗いましょう。
・犬も感染した野ネズミを食べると感染してしまうので、放し飼いにせず、散歩時の拾い食いに注意しましょう。また、犬の糞便も適切に処理しましょう。

エキノコックス症はヒトと動物に共通する感染症ですが、適切に予防すればヒトへの感染の危険性は低いです。
また、エキノコックスに感染した犬においてエキノコックスに効果のある駆虫薬は、通常、一回の投与でほぼ100%の駆虫効果があるとされています。

このように以前はその地域では存在しなかったような感染症がヒトやモノの交流で侵入してくることもあります。
飼い犬と野山に出かけたり、キャンプに行く機会がありましたら、自然のものを口にしたり、むやみに野生動物と接触しないように心がけましょう。皆さんのちょっとした心がけで、エキノコックス症に限らず、様々な感染症の拡大を防ぐことができるでしょう。

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