近年は、猫を屋内で飼育する家庭が増えています。
屋内では、外で起こる様々な危険(交通事故、感染症、縄張り争い、悪天候、迷子など)
を心配することなく、安全な暮らしが可能です。
しかし、屋内で生活していれば、いつでも安全とは限りません。
それは、家の中にも危険がひそんでいて、猫が思わぬ事故などに遭遇すること
もあるからです。家の中にひそむ危険は、普段は気づきにくく、
何かが起こって初めてその重大さに気づくことが多いです。そのため、日ごろから
どのような危険があるのかを把握し、事故などを予防していくことが大切です。
では、家の中にはどのような危険があるのでしょうか。
1. ケガ
(1)ドア
猫が足元にいるのに気づかずにドアを閉めて、尾や足を挟んでしまうことがあります。
ドアの開閉時には、常に猫の存在を意識しましょう。
(2)落下
キャットタワーやタンスの上などに、固定していない猫用ベッドなどが
あると、平衡感覚のよい猫でもついすべって、それらと共に落下することが
あります。これらは両面テープなどで固定しましょう。
(3)倒れやすいもの
壁に立てかけた琴(楽器)が倒れて大ケガをした猫がいました。
家の中に倒れやすいものはないか確認しましょう。
(4)爪の剥離
カーペットやカーテンに爪を引っ掛けて剥がすことがあります。
これは爪の伸び過ぎで起こりやすく、爪を切っておくとある程度予防できます。
(5)おもちゃ
ネズミの形をしたおもちゃを咬んで犬歯を折った猫がいました。
おもちゃを調べると、中には音がするように石が入っていました。
おもちゃは、安全性を確認してから与えましょう。
(6)毛玉を取る際に
体表にできた毛玉をハサミで切ろうとして、皮膚を切ってしまうことが
あります。毛玉を取るときは、毛玉と皮膚の間にくしを差し込んで、
くしの上で切るようにしましょう。
(7)感電
電気コードを咬む猫は、感電の心配がありますので、
コードはできるだけ隠すか、カバーを付けましょう。
(8)首輪
首輪は、引っかかった時に外れる安全装置付のものを使いましょう。
リボンを結んだだけの首輪は外れず危険です。
子猫では、体の成長に合わせて首輪を緩めるのを忘れないようにしましょう。
2. 中毒
(1)植物
ユリの花びら、花粉、葉を食べると、少量でも腎障害を起こす可能性があります。
ユリ以外にもシクラメン(嘔吐、下痢)、スイセン(心不全)、
スズラン(嘔吐、下痢、心不全)、チューリップ(心不全)、
ポインセチア(皮膚炎、口内炎)、ポトス(皮膚炎、口内炎)など
中毒を起こす植物は多数あります。猫のいる部屋には植物を置かない方が安全です。
(2)ネギ(タマネギ、長ネギ、ニラなど)
ネギの入ったハンバーグやスープなどを食べると、赤血球が破壊され
貧血、黄疸などを起こすことがあります。
(3)薬
人用の薬を食卓に置き忘れたり、床に落として紛失すると、
猫が飲んでしまうかもしれません。人用の薬は一粒でも猫には用量が
過剰で有害になりやすいです。中でも毒性が強いものは、
アセトアミノフェンを含む風邪薬(肝障害)と解熱鎮痛剤全般
(腎障害や胃潰瘍)です。猫が風邪をひいたから、
またはどこか痛そうだからといって、これらの薬を飲ませてはいけません。
(3)サプリメント
ダイエット効果があるとされるアルファ-リポ酸という
人用のサプリメントは、猫が摂取すると重度の肝障害を起こします。
猫はこのサプリメントの味が好きで夢中で食べてしまいますので、
しっかり保管しましょう。
(4)殺虫剤
家庭で使う一般的な殺虫剤は、経口以外に皮膚からも吸収され、
けいれんなどの神経症状を起こすことがあります。
犬用のスポットタイプのノミ・マダニ駆除剤でペルメトリンを含むものは、
誤って猫に使うと重い神経症状を起こします。
(5)アロマオイル
アロマオイルにはリモネンなどのかんきつ類のオイルが
含まれていることがあり、摂取や皮膚への付着で、よだれ、皮膚炎などを
起こすことがあります。
3. 誤飲
(1)糸やひも
裁縫中に席を離れると、猫が糸にじゃれて飲み込んでしまうことがあります。
糸に針が付いていれば針も一緒に飲んでしまいます。
糸はしばしば消化管にからまるため、手術が必要になります。
ひもやリボンの誤飲も多いので要注意です。
(2)食品の食べ残しや包装
人が食べ残した魚の骨、肉の付いた串、食品の包装などを不用意に捨てると、
猫はそれらをあさって食べてしまい、消化管の穿孔や腸閉塞を起こすことが
あります。
これらのものを捨てる時は、厳重に包んで、ふた付きのごみ箱に捨てましょう。
(3)おもちゃ、アクセサリー
小さなおもちゃは遊んでいるうちに誤飲してしまうことが多いです。
イヤリングなどの小さなアクセサリーも誤飲にご注意ください。
(4)そのほかに
猫は、自分のお気に入りのものを誤飲する傾向があります。
たとえば、いつも噛んでいたマット、よじ登って遊んでいたカーテン、
寝る前にしゃぶっていたセーターなどです。これらを噛んだり舐めたり、
爪で引っかいたりしてボロボロにし、切れ端ができるとそれを飲んでしまう
ことがあるのです。
もし、猫が普段からいじっているお気に入りのものがあれば、誤飲に注意しましょう。
4. 脱走、転落、侵入
(1)脱走
玄関で人が出入りする際、猫が外に出てしまうことがあります。
猫が出たことに気づかないと、外にいる時間が長くなり、
行方不明になる可能性も高まります。窓からの脱走にも注意しましょう。
網戸を閉めても、網戸は壊れやすいので安全とはいえません。
また、倒し窓のようなやや特殊な形状をした窓は、
猫が通過する際に、隙間に体が挟まることがあり大変危険です。
(2)転落
猫は、バルコニーに出たり、窓際で外を見るのが好きですが、
バルコニーや窓が地面からどのくらい高いのか認識できていない可能性があり、
鳥や虫に気をとられてうっかり転落してしまうようです。
バルコニーにはネットを張り、窓には格子をつけるなどの十分な対策が必要です。
(3)侵入
窓を開放していると、時には外の猫が家の中に侵入して、
家の猫とケンカになることがあります。
5. やけど
(1)コンロ
コンロ周辺では、熱湯がこぼれてやけどをしたり、熱いコンロの上に
飛び乗ってパッドをやけどしたりすることがあります。
熱いものを扱っている時は、猫から目を離さないことが大切です。
(2)ストーブ、床暖房
猫はストーブに寄り過ぎて、被毛を焦がすことがあります。
さらに近づけばやけどを起こす心配がありますので、ストーブから
離れさせるようにしましょう。
床暖房の上にずっと寝ていて、低温やけどを起こす猫もいます。
症状は、脱毛と皮膚の発赤です。
床暖房の上にタオルを2~3枚重ねて敷いて予防しましょう。
(3)風呂
風呂を沸かした時に、熱湯が上層に集まる浴槽では、猫が転落すると
非常に重度のやけどを負います。湯を沸かす時は猫が浴室に入れないようにしましょう。
風呂を使用しない時は、浴槽で溺れないように水は抜いておきましょう。
6. こんなことにも気をつけよう
(1)夏の留守番
猫は比較的暑さに強い動物ですが、最近の夏の酷暑では、
留守番中に冷房がないと体調を崩したり、熱中症を起こす心配があります。
夏の留守番には、弱め(28~30℃)でよいので冷房を使いましょう。
(2)たばこの煙
たばこの煙には発がん性があり、それに日常的にさらされた猫では
リンパ腫や口腔がんの発生率が高くなるという報告があります。
たばこの煙は吸入するだけでなく、猫の被毛に付着すると猫は体を
グルーミングしてそれらを摂取してしまいます。
猫のいるところでの喫煙はやめましょう。
(3)ハチ
洗濯物などにまぎれて室内にハチが入り込むことがあります。
猫がハチに近づいて刺されると、刺されたところは赤く腫れ、痛みが出ます。
さらに、過去にもハチに刺されたことがあり、
同じ種類のハチに再び刺された場合は、アナフィラキシーという
ショック症状を起こすことがあります。
室内にハチが入り込んだら、猫を避難させましょう。
(4)ネズミ捕り用粘着シート
ネズミ捕り用粘着シートが猫にくっつくと、次々と体中に
張り付いてしまい取れなくます。どうにかシートを取り除いても、
のりが被毛にべったりと残って容易に落とすことができません。
ネズミ捕り用粘着シートは、猫が届かない場所で使用しましょう。