獣医さんといえば、動物に関わる仕事だけをしていると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
埼玉県内には地域住民の健康や衛生を支える「保健所」が17カ所あり、多くの獣医師が勤務していますが、動物に触らない仕事をしている場合もあるのです。
今回は、保健所の業務の中でも、「獣医師なのに動物に触らない」仕事をする食品衛生監視員を紹介します。
○保健所とは
地域住民の健康や衛生を支えるため、地域保健法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市等が設置する公的機関です。
保健所の業務は対人保健と対物保健に大別されますが、獣医師が関わるのは主に対物保健業務になります。
対物保健業務は、一般に生活衛生と呼ばれ、食品衛生、獣医衛生、環境衛生及び医事・薬事衛生の4分野からなります。営業許可や立入検査、違反施設に対する営業停止などの権限を多く持って業務に当たります。
対応する法律により資格が規定されており、獣医師は食品衛生監視員、狂犬病予防員、動物愛護監視員、環境衛生監視員、医療監視員、薬事監視員としてそれぞれの業務を受け持ちます。
このうち、食品衛生法により規定されるのが「食品衛生監視員」です。
〇食品衛生監視員の資格要件
厚生労働大臣又は都道府県知事等により、次のいずれかの条件(任用資格)を満たす公務員の中から任命されます。
1.都道府県知事の登録を受けた食品衛生監視員の養成施設において、
所定の課程を修了した者
2.医師、歯科医師、薬剤師、獣医師
3.学校教育法に基づく大学若しくは高等専門学校等において
医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、又は農芸化学の課程を修めて卒業した者
4.栄養士で、2年以上食品衛生行政に関する事務に従事した経験を有するもの
埼玉県の場合、獣医師や薬剤師などの免許資格職として採用された職員が、保健所に配属された時に「食品衛生監視員」として任命を受けています。
○業務内容
保健所の食品衛生監視員は、次のような業務を行っています。
・ 食品等事業者の営業許可申請の受付、実地検査、許可書の交付
・ 食品等事業者の施設の衛生監視及び指導
・ 所管区域で製造又は流通する食品の収去検査※
・ 食中毒発生(疑いも含む)時の調査
・ 食品に関する苦情対応及び調査
・ 食品衛生法や各自治体の条例に関する調査及び違反に対する行政処分
・ 事業者や住民に対する食品衛生に関する情報提供及び教育、知識の普及
この他、本庁に勤務して、卸売市場の衛生監視や、食品衛生行政に関する業務を担当している食品衛生監視員もいます。
○獣医師を目指す学生の皆様へ
今、全国の地方自治体で、公衆衛生獣医師の現場で職員不足が懸念されています。
公務員獣医師の職務は、先日のトピックスで紹介した「家畜保健衛生所」や「衛生研究所」での研究、「と畜検査」など、幅広い分野で多岐に渡っています。
直接動物に触れることがなくとも、地域の健康や衛生に貢献できる、重要でやりがいのある業務が沢山あります。
皆様の将来の就職先として、選択肢に加えてください。
※ 「収去検査」とは、食品の製造、販売等を行う事業者から、
製品を無償で抜き取り、細菌検査等の試験を行うものです。