人獣共通感染症について

2017年3月29日

 人獣共通感染症とは、人と動物どちらにも感染する事ができる病原体による感染症のことです。人の感染症対策の立場から、動物由来感染症とも呼ばれています。

 人に感染する病原体は約1700種ありますが、その中で共通感染症は200種以上あります。そのうち、私たちに身近な小動物から感染する可能性があるのは、約40種です。病原体の種類は、細菌、真菌、ウイルス、リケッチア、クラミジア、寄生虫など様々です。ただ、これらの病原体の全てがエボラ出血熱のように強い感染性を示したり重篤な症状になるわけではなく、人や動物の健康状態や免疫状態によっては感染しても無症状である場合もあります。したがって、犬や猫などの伴侶動物と快適な生活を送るためには、ただ怖がるだけでなく共通感染症に対する正しい知識を持つことが大切です。

 

動物から感染する可能性のある共通感染症をいくつか抜粋してみました。

病 名

人の症状

感染源となる主な動物

サルモネラ症

胃腸炎、敗血症

犬、猫、猿、鳥類、爬虫類

パスツレラ症

創傷感染、気管支肺炎

犬、猫、げっ歯類

カンピロバクター症

胃腸炎

犬、鳥類

レプトスピラ症

発熱、出血、黄疸、腎炎

犬、げっ歯類

猫ひっかき病

リンパ節炎、発熱、脳炎

鳥インフルエンザ

発熱、呼吸器症状

鳥類

オウム病

肺炎

鳥類

狂犬病

神経症状

犬、(猫)

SFTS

神経症状、消化器症状

マダニ

エボラ出血熱

発熱、出血、ショック

犬猫回虫移行症

失明、肺炎

犬、猫

トキソプラズマ症

水頭症、リンパ節炎

犬糸状虫症

咳、呼吸困難

エキノコックス症

肝障害

犬、猫

皮膚糸状菌症

皮膚炎

犬、猫

ノミ刺咬症

皮膚炎

犬、猫

疥癬

皮膚炎

犬、猫

 

 海外にあって国内にない感染症、国内の限定された地域に発生している感染症、身近に発生している感染症、まれに発生している感染症、感染のしやすさや重症度も様々であります。

 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、2011年に中国で発見された新しいウイルスによる感染症であり、マダニに咬まれることにより感染します。この感染症は鹿やイノシシ、猟犬にも感染が確認されていますが、人と違い病気の発症は無いと考えられております。

 狂犬病やエボラ出血熱は海外では発生していますが、国内で、動物からの感染による発生はありません。これら、致死率の高い感染症は、絶対に国内発生を防がなければなりません。

 皮膚糸状菌症(カビ)、ノミ刺咬症(ノミ)、疥癬(ダニ)は日常よく見られる感染症で、いずれも皮膚に炎症やかゆみを起こします。治療可能な病気ですので早期発見、早期治療が重要です。

 人獣共通感染症は、感染動物との接触やベクター(媒介昆虫など)を介して感染が成立します。感染の確率を下げるためには、動物を触った後に必ず手洗いをする、アルコールなどで消毒する、むやみに野生動物に触らない、人は虫除けスプレー、伴侶動物はノミダニ予防剤をつけて媒介昆虫から身を守る事が必要です。

 

 伴侶動物の健康状態の変化に気づくのは、通常飼主さんですが、感染症の危険要素をもっとも的確に判断できるのは専門家である獣医師です。

獣医師は常に伴侶動物や身近な野生動物の感染症に対して目を光らせております。不安な事、わからない事がある場合には、獣医師がいる行政機関、保健所、動物病院などに相談することが感染症の早期発見、感染拡大の防止につながります。

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