マダニは節足動物門、クモ綱、ダニ目、マダニ類、マダニ科に分類されます。
日本ではマダニ科は30余種が報告され、その中でもオウシマダニ、クリイロコイタマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマトマダニ、タカサゴキララマダニなどが家畜の主要な寄生虫として知られています。また、基本的形態としてマダニは顎体部と胴体部からなり、顎体部は口器に相当しています。
マダニの発育過程は卵、幼虫、若虫(わかむし)、成虫と成長します。最初に孵化した幼虫は、草などにのぼり、野ネズミなどの地表近くで生活する小型げっ歯類の接近を待ちます。寄生すると吸血し、飽血(*1)すると地上に落下し、幼虫は脱皮して若虫になります。若虫も同様に哺乳類や鳥類に寄生して吸血し、飽血、落下後に脱皮して成虫になります。成虫は1週間程度吸血して交尾した後に落下し、産卵します。このようにマダニの吸血は幼虫から成虫にかけて行われ、その目的は脱皮と産卵であることがわかります。また、各発育期の体の特徴ですが、幼虫の脚が3対6本であるのに対し、若虫と成虫の脚は4対8本あります。また、成虫にだけ生殖器があることが知られています。
では、マダニがどうして宿主に寄生できるのでしょうか?それは、マダニの第一脚末節のハラー氏器官(*2)や触肢(*3)などの感覚器があるからです。この感覚器を使って、宿主の臭気や炭酸ガス、体温や振動を認知して宿主に接触の機会を待っているのです。次に吸血の話ですが、マダニは口下片(こうかへん)(*4)を皮膚に差し込み皮下に形成された血液プールから血液を摂取します。血液が凝固などしないように、マダニは唾液中に様々な生理活性物質を分泌しながら吸血しています。これが、吸血時に家畜や人にダニ麻痺(*5)を引き起こす原因となります。また、ペットに寄生しているマダニを見た時、飼主さんが手で物理的に取除くと口下片がある顎体部だけ残り、ペットに皮膚炎を継発することもあるので注意が必要です。その場合には動物病院に相談・受診することをお勧めします。
寒い冬のあいだ、マダニの虫体は枯れ葉の陰で越冬して過ごしていることはあまり知られていません。これから気温が上昇するにつれ、マダニの活動が増し、ペットへの寄生も多くなることが予測されます。また、マダニ媒介感染症として重症熱性血小板減少症候群(*6)なども多く報告されています。一方でマダニの駆除剤も多数の経口剤と外用剤が動物病院にて処方されるようになりました。それぞれ特徴があり獣医師に相談して上手にマダニ駆除薬を使用することが大切です。最後に庭にマダニがいる場合には、野外で使用できる殺虫剤(ピレスロイド系)がありますので、説明事項を確認してペットを庭に出す前に使用すると良いと思われます。
*1飽血 マダニが吸血して満腹状態になること
*2ハラー氏器官 マダニ特有の器官で、昆虫の触角に相当する感覚器の役目 をもつ。
*3触肢 マダニの顎体部にある感覚器官で表面に感覚毛がある。
*4口下片 マダニの顎体部にあり、吸血する際にこれを宿主の皮下に差し込み体を固定する役目をする。
*5ダニ麻痺 マダニの唾液中に含まれる末梢神経性毒素が原因となり、神経症状を引き起こす。
*6重症熱性血小板減少症候群 ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスが原因となるダニ媒介性感染症。(2017年12月4日掲載の本トピックスを参照)