寒さも徐々に遠のき、春がやってくると迷惑な害虫たちも活発に活動し始めます。私たちとペットが楽しく生活するために、ちょっと勉強してみましょう。
○ノミ編
どうしてノミを駆除する必要があるの?
ノミは犬や猫の体表にすみつき刺咬して吸血します。ノミが寄生した犬や猫は激しいかゆみのため体をかきむしり、被毛はまばらになります。また多数のノミが寄生している犬や猫を室内飼育している場合、ノミは人にも寄生して吸血する事があります。人と動物が健康に快適に暮らすためにノミは是非駆除しておきましょう。
ノミについてのお勉強
ノミは分類上、昆虫綱ノミ目で、完全変態(卵〜幼虫〜さなぎ〜成虫)をします。世界に2200種以上、日本だけでも約70種います。
草むらなどでペットに飛び移ったノミは寄生後すぐさま吸血・交尾して24〜48時間で産卵を開始します。1日に20〜50個、一生のうちには多い時は1000個以上産卵します
床へ落ちた卵はやがて孵化して幼虫となり、カーペットの奥などへ潜り込みます。それから蛹になり振動や二酸化炭素に反応して羽化し、犬や猫に寄生します。
このサイクルにかかる日数は気温などの環境条件で異なり、最短2〜3週間、状況によっては300日以上かけてくりかえされます。特に、蛹の状態なら、13℃において140日も生き延びます。つまり、室内では冬でもノミの被害は発生する可能性がある事になります。
ノミが引き起こす病害には次のようなものがあります。
☆ 貧血
吸血により貧血が起こりますが、寄生数が多い場合や、動物が幼弱、老齢であったり、衰
弱した動物の場合は特に深刻です。
☆ 条虫症
犬や猫の消化管に寄生をして下痢などを引き起こすサナダムシの一つに犬条虫(瓜実条
虫)というものがありますが、ノミはこの犬条虫(瓜実条虫)の中間宿主になっています。
ノミは犬条虫(瓜実条虫)が犬や猫に寄生する原因になります。
☆ ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの刺咬に伴って体内に入ってくるノミの唾液成分でアレルギーを起こします。ペット
は自分で体をかきむしり、皮膚に傷を作ります。細菌の二次感染を起こし化膿することも多
く、脱毛も激しいです。
☆ 猫ひっかき病
これは人の病気です。病名の通り猫が人をひっかいたり、かんだりして人に感染します。
原因は、猫の口腔内や爪などにいる、Bartonella henselaeという細菌ですが、ノミはこの
細菌を猫から猫へと運んでいきます。また猫どうしの喧嘩で直接他の猫に感染していく事も
あります。猫はこの細菌に感染しても症状が出ませんが、人では、丘疹、水包、化膿、リン
パ節の腫れなどの症状が起こり、微熱が続きます。免疫能力の低下している高齢者などでは
重症化する事があります。
今まで平気だったのにノミがついちゃった、なんてことありませんか?
☆外出やお散歩をしていますか?
☆新しい動物が家に来ませんでしたか?
☆野良猫の集まっている場所に行きませんでしたか?
こんな機会にノミは寄生をはじめます。今までもノミの対策をしていたのに寄生を受けてしまった、という場合はその対策が適切かどうか見直してみましょう。
○マダニ編
どうしてマダニを駆除する必要があるの?
ノミと同様、マダニも体表にとりついて吸血します。吸血による直接的な病害の他、他の病気を媒介する事が知られています。
マダニについてのお勉強
マダニは分類上はクモ綱ダニ目で、日本には、全国的に分布するフタトゲチマダニ(バべシアを媒介)やキチマダニ(野兎病を媒介)、北海道、東北、中部山岳地帯に分布するシュルツェマダニ(ライム病を媒介)、沖縄を中心に分布するクリイロコイタマダニ(バべシア、エールリッヒアを媒介)など、約20種類がいます。
フタトゲチマダニの活動が盛んになる季節は春先から夏にかけてですが、種類によっては秋、冬に活動したり、また一年を通して活動するものもあります。秋や冬でも油断は禁物です。
マダニは卵からかえると幼ダニとなり草むらなどで待機します。そこへ散歩中の犬などが来ると、犬の引き起こす振動や呼気の二酸化炭素などに反応して体表に飛び移り吸血をはじめます。お腹いっぱいまで吸血すると(飽血)一度地面に落ちて脱皮をして若ダニとなります。若ダニはまたペットの体表に飛び移り吸血し飽血するとまた地面に落下して脱皮、ようやく成ダニ(大人のダニ)になります。成ダニも吸血して飽血すると地面に落ちますが、こんどは脱皮をしないで産卵します。やがて卵はかえって次の世代へと移っていきます。
マダニの引き起こす病害には次のようなものがあります
☆ 直接的病害
吸血する事で貧血や皮膚の損傷、皮膚の細菌感染、アレルギーなどを引き起こします。
☆ 犬のマダニ媒介性疾患
マダニが吸血する際に犬の体内にいろいろな病原体が入ってきます。それぞれの病気につ
いての説明は割愛しますが、犬バべシア症、犬ライム病、犬ヘモバルトネラ症、エール
リッヒア症、へパトゾーン症、Q熱などがこれにあたります。
☆ ヒトのマダニ媒介性疾患
マダニは人にも寄生して吸血します。その際にライム病、野兎病、日本紅斑熱、Q熱などの
病原体を媒介する事が知られています。
マダニがついたら
マダニがついたら なるべく早く除去すべきです。病原体を媒介する危険性が高いのは、ダニの吸血開始から48時間以降といわれています。
しかし、マダニは吸血する際に、くちばし状の口下片を皮膚の深い所まで刺し、さらに抜けにくい様にセメントの様な物質で固めるために、マダニをつまんで安易に引っ張って取ろうとしてはいけません。口下片だけが皮内に残って炎症をおこします。
専用のピンセットで慎重に除去するか、動物病院での処置を受けてください。
近年、今まで被害が少なかった都市部にも、マダニの被害が広がっています。荒川河川敷を上流面から下って繁殖している野生のタヌキが被害を広げているという情報もあります。
どうやってノミやマダニからペットを守ればいいの
ノミもマダニもちょっとした草むらで待機しています。普通のお散歩などで寄生が始まるので定期的な駆除、予防をしましょう。
ノミやマダニの駆除薬はさまざまな種類がありますが、近年は極めて安全性が高く、駆除効果も高いものが使用されています。しかし中には殺虫剤の成分を使用している製品などもあり、幼弱なペットや妊娠、授乳中のペットには考慮が必要です。またある種のハーブをノミやマダニの忌避剤として使用しているものもあり、これらは駆除効果としては疑問が残ります。
ペットの種類、年齢、生活環境に合わせて適切な薬剤と方法での駆除、予防をするべきです。かかりつけの動物病院に相談して、ノミ・マダニの害からペットと人間を守りましょう。