最近、テレビやインターネットでジビエの話をよく目にします。ジビエとは食用として捕獲した野生鳥獣の肉を意味するフランス語で、元々ヨーロッパの食文化として根付いていたものが日本でも広まっています。
日本では野生鳥獣は農作物被害の原因になったり、人に怪我を負わせたりする場合は「害獣」として扱われていたのですが、食肉として利用することで地域特産の「資源」としてみなされるようになっています。埼玉県内でも県北・秩父地域などでは行政も一体となってジビエ利用を進めています。
人用の食肉としてジビエ利用が進んでいるのですが、同様にペットフードとしてのジビエ利用も進んでいます。ジビエは牛や豚に比べて低脂質・高たんぱくで鉄分などの栄養に優れていて、アスリートの体づくりにも注目されているほどです。この特徴はペットフードにもぴったりで、ジャーキー、ウェットフードなどをペットショップでも見かけるようになりました。
また、ジビエのペットフードへの利用は、「資源」の有効活用という点でも大きなメリットがあります。野生鳥獣は自然の中で育っているので、家畜のように管理されていないことに加え、狩猟の方法も様々なので、品質が一定ではありません。肉が固かったり、臭いが強かったりして人用に向かない個体が一定数います。そういった個体や、元々人間の食用にできず、棄てるしかしなかった部分(内臓、骨など)をペットフードにすることで、「資源」を無駄なく利用できます。
メリットが多くある一方で、注意すべき点もあります。大切な家族であるペットの健康を守るため、ペットフードやその原料においても、衛生や安全性が担保される必要があります。人用の食品が食品衛生法で規制され、衛生的に処理・加工されたものでなければ製造、販売できないように、ペットフードについても、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」、いわゆる「ペットフード安全法」により基準や規格が定められました。ペットフード用のジビエも賞味期限や原産国名、事業者の名前や住所を表示する必要があります。ペット用のジビエを購入するときは、まずは表示(名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名、事業者住所)がしっかりされているか確認するようにしましょう。
また、先ほど説明したとおり、野生鳥獣は自然の中で育っているので、家畜よりもたくさんの病原体を持っています。野生鳥獣が持つ病原体にはペットにとって有害なものがあり、加熱不足の状態で食べると病気にかかる可能性があります。ジビエペットフードにはドライフード、ジャーキー、水煮などの加熱済みのもの以外にも、飼い主さんが調理する手作りフード用の生肉も販売されています。生肉を調理してペットへ食べさせる場合は、中心まで十分に加熱することが必要です。加熱が必要な場合はラベルに「加熱用」と書いてあるので、よく確認してください。
最後に、人ではジビエの刺身、ロースト、炙りといった加熱が足りないジビエ料理を原因とする食中毒(腸管出血性大腸菌、E型肝炎ウイルス、寄生虫など)が多く発生しています。ジビエを食べるときは、必ず中心まで十分に加熱(75℃で1分以上)してください。たまに「新鮮だから生で食べられる」といったことを聞きますが、そんなことはありません。自然の中で育っている野生鳥獣は、寄生虫や様々な病原体に汚染されているリスクが高いため、必ず加熱してください。むしろ、「新鮮なものの生食ほどリスクが高い」と言えます。ペットの体調も大事ですが、飼い主さんやご家族の体調も大事ですので、十分注意して、おいしいジビエを食べましょう。