東洋眼虫という寄生虫をご存知でしょうか?
なんだかエキゾチックな名前ですが、この寄生虫の発生する地域は日本を始め、韓国や中国、インド、ベトナム、タイ、ロシアなどアジアを中心に分布しています。
そして寄生する場所が眼!通常はイヌ、まれにネコに寄生しますが、ヒトにも寄生する人獣共通感染症です。
そんな東洋眼虫の動物への感染について、少し詳しくお話しします。
東洋眼虫の日本での分布は温暖な地域の西日本に多く確認されていました。 しかし、近年の温暖化の影響や、イヌと一緒に旅行するようなライフスタイルの変化に伴い、私たちの住む埼玉県でも認められるようになりました。
動物やヒトへの東洋眼虫の感染は、ショウジョウバエ科のメマトイという虫が中間宿主となります。メマトイが東洋眼虫に感染した動物の眼から涙液を吸い同時に子虫卵を摂取し、その後に他の動物やヒトに感染させます。
関東地方では、もともと日本にはいなかった外来生物で農作物や生態系への被害があるため特定外来生物に指定されているアライグマから、イヌやネコへの東洋眼虫の感染が報告されています。
東洋眼虫の寄生する場所は、まぶたの裏の結膜嚢内、特に瞬膜(第三眼瞼)の裏側に寄生し、大きさ約7〜17mmで、乳白色の細長い虫体を確認することができます。
東洋眼虫の感染による症状は粘液性の目やにが出たり、眼の異物感や痒みで眼を擦り付けたり、結膜炎の症状を引き起こします。
治療は点眼麻酔後に虫体をピンセットで眼から摘み出します。特に瞬膜の裏側に寄生している虫体は発見しにくく、複数回受診し除去を行うことが多いかもしれません。
虫体除去後に摘出しきれない小さな仔虫の駆虫のために、フィラリア予防にも使用されるスポット薬の体表への滴下や内服薬が効果的という報告もあります。
イヌやネコへの東洋眼虫の感染は主に春から秋なので、継続的にフィラリア予防を行うことで感染予防が期待できます。また、フィラリア予防が終了する晩秋に感染し、1〜3月に確認されることがありますので、イヌやネコが眼に違和感があるようでしたら、動物病院への受診をおすすめします。
ヒトへの感染は主にメマトイが顔に近付いても払うことができない乳幼児や高齢者に多いそうなので、フィラリア予防は動物の健康を守るだけでなく、動物への感染を抑えることにより、ヒトへ感染予防の可能性もあります。
東洋眼虫に限らず、イヌやネコに寄生するフィラリアやノミ、マダニの予防がご家族の健康のためにもなりますので、ぜひ定期的な予防をしっかり実施していきましょう。