近年、飼育環境の向上や獣医療の進歩にともなって、動物の平均寿命は延びています。
病気に関して言えば、人の死亡原因の上位に癌や心臓病が入ってきますが、例外はあるものの長く生きていれば発生リスクは自然と高まるものです。動物でも、同様の考え方で概ね間違ってはいないでしょう。
では、イザという時のために何を考えておくべきなのでしょうか。飼っている動物が数日前から体調を崩してしまったという例で考えてみます。
ホームドクターを受診したところ、診断を下すには更に精密検査が必要で、専門医を受診することを薦められました。ちょっと厄介な病気の可能性が考えられます。
この時に「どうするのか」をなるべく早く決断する事が大切です。
概ね、3つの選択肢に分けられると思います。
○紹介された病院で検査や治療を受ける。
メリット:ほぼ確実に診断が下り、治療方針も明確になる。
そのまま治療を受ける事もできる。
治療内容によっては、かかりつけ病院に引き継ぐこともできる。
デメリット:検査、治療の内容で異なるが、費用の負担が大きくなることがある。
自宅から遠い、仕事の都合など、診察予約が決まらないこともある。
○自分で他の病院を探して、診察を受ける(セカンドオピニオン)
メリット:他の獣医師の診察により、別の診断や治療指針が提示されることもある。
その際は、検査結果、治療内容、処方された薬などの情報があると
スムースです。
デメリット:特に無いが、情報の整理がつかなくなってしまうこともある。
○ホームドクターの病院で、できる範囲の検査や治療を受ける
メリット:相談もしやすく、その病気以外のことでも、ホームドクターは考慮してくれる。
デメリット:診断や治療方針が明確になっていないため、治療反応が良い時は問題ないが、
再発や状態が悪化した時に、治療が行き詰ってしまうこともある。
また、治療しても良くならない場合もある。
イザという時のために、日頃から考えておくべき事とは・・・
何かが起こったときに、「どうするのか、どうしたいのか」を家族で話し合って
おくことが大切です。家族で意見が分かれてしまうのは良くありません。
短期間で検査や治療が終了するものであれば良いが、長期間を要する場合、
仕事や家庭の事情など、時間の制約がある時にはどうすべきなのか。
投薬や治療を嫌がる子の場合、継続する事に無理が生じないかどうか。
検査や治療にかけられる費用(予算)を考えておく。
インターネットなどを通じて得た情報は鵜呑みにせず、獣医師に相談する。
例え、その検査や治療が「ベスト」と言われるものでなかったとしても、
獣医師とよく話し合い納得した上で、
動物にも飼い主にもストレスの少ない治療を行うことができたなら、
それを「ベスト」と考えることもできます。
動物は自分で判断し、行動することができません。
一般的に「ベスト」といわれる検査や治療には、時間の制約や費用の問題などが
生じるかもしれないことを考慮しておくことも大切です。
動物は飼い主をいつも見ています。
悲しんだり、怒ったり、悩んだり、マイナスな感情は動物にも
ストレスを与えてしまいます。彼らはストレスを与える相手には
寄りつこうとはしません。
この子のためにと思ってやった事が、時にお互いの良い関係を崩してしまうことも
あります。
納得のできるベストな方法を選択できるように、
心構えをしておくことも大切ではないでしょうか。