動物の健康に不安や異常を感じた時に、あらかじめ上手に動物病院にかかる要点を心得ておくことで、飼い主さんと私たち獣医師あるいは受付との連携がスムーズに運び、動物を最善の方法で診療することができるようになります。以下にその要点をご説明しましょう。ただし、これらの事項は飼い主さんの都合や私たち獣医師側の要因、動物の状態などで様々に変化します。したがって下記の要点が唯一の正しい方法とは限らない事を予めお断りしておきます。
はじめに
あらかじめかかりつけの動物病院を決めておき、電話番号、受付の方法、担当の先生の名前、診療時間などを控えておいてください。
動物に異変を感じたら
まず動物に異変を感じ、心配な様子であれば必ず獣医師の診察を受けましょう。どの時点で動物病院にかかるかについて簡単明瞭な基準があればよいのですが、残念ながらそのような基準はありません。
時々、「気にしすぎでしょうか?」と心配している飼い主を見かけますが、私たち獣医師から見ると、そのような人と共に暮らしている動物は安心なことが多く、気にしすぎより手遅れになる方がよっぽど問題です。たとえ気にしすぎる傾向があるとしても一緒に暮らしていくうちに、次第にその傾向が少なくなります。
私たち獣医師から見た典型的な手遅れは、「昨日の朝から何回も吐いてだんだん元気もなくなり、様子を見ていたらぐったりしてしまったので連れてきました」と言いながら、病院が閉まる間際、あるいは時間外に連れてこられる例です。
つまり動物の異常に気がついてから病院に連れてくるまで丸1日半も経過し、動物の状態も重篤になり、そろそろ動物病院も閉まる頃になって不安が増してからやっと連れてこられる例などです。
確かに仕事やそのほかの都合で直ぐに病院へ連れて行くことが難しい時もあるかもしれませんが、このようなケースは治療の甲斐無く(原因や治療方法が分かっていても)命を落としてしまう事も少なくありません。動物病院が最善の獣医療を提供できるのはそれぞれの診療時間内です。
また受診の際は動物のことを一番知っている人に連れてきていただくと一番良いのですが、それがかなわない場合にはその人と連絡が取れる方法を考えておいてください。
動物病院へ連絡
あらかじめ決めておいた方法に従って連絡しましょう。
今回が初めてで、かかりつけの動物病院がまだ決まっていない場合には、インターネット、電話帳、NTT番号案内、町内の回覧板、近隣の住人や知り合いの紹介などから動物病院を探し、まずは電話をして下さい。電話が通じたら、できるだけ落ち着いて現状を簡潔明瞭にお話下さい。
動物病院に着いたら
救急救命が必要な場合には多少前後することもありますが、通常は最初にカルテを作成しますので以下の点について用意しておいてください。
・ 飼い主さんの氏名、住所、連絡先、勤務先
・ 動物の名前、動物種、血統、性別、生年月日、性格などが必要です。
その後に問診が始まります。
症状について
動物の状態によっては飼い主さんは慌てていると思われますが、努めておちついて、簡潔明瞭に動物の症状を獣医師に伝えてください。診断や治療をする上で必ず聞かせていただきたいことを、あらかじめまとめておいていただくと非常に助かります。またこれに費やす貴重な時間を短縮できます。つまり
・ 症状は何か
・ 症状はいつから始まってその程度は変化しているのか
・ きっかけは何か、思い当たる原因は何か
・ 食欲、元気はあるか
・ 排便、排尿の状況はどうか
・ 嘔吐、下痢はあるか、あるならばその程度は
などについて用意しておいてください。
きっかけや原因については飼い主さんが疑わしいと思っているものでいいのです。わからない点はわからないと伝えて下さい。
さらにこの他には
普段食べている食事について
食事とは一日何回かに分けて食べる通常の食事の他に、いわゆるおやつも含みます。
簡単に言うと口にする全ての物をお教え下さい。
また、食事ではありませんが、よく噛んでいる物(ティッシュ、絨毯の端、布、ボール、梅干しや果物の種)や、様々な物を口にする傾向があれば、そのこともお伝え下さい。
以前の予防や治療歴について
今までの病歴、ワクチン接種歴、フィラリアやノミ、寄生虫に対する予防歴、現在飲んでいる薬などについてお聞きします。
診察/検査/治療
ここから実際の診察が始まり、必要に応じて検査や治療を行います。
これらの経過中、あるいは終了時に、病名と現状、治療法、今後の注意点、再診や入院に関する指示、そのほか必要事項について説明があります。不明な点や質問があればお聞き下さい。
ただし、さらに検査を進めなければならない場合や即座に結果が出ない検査、あるいは治療経過から疾患を判断する場合など様々な状況があり、この時点で確定診断が下せない場合も多々あります。
最後に生活上の注意点や投薬方法、次回の診察日等についても聞いておいてください。また病状が急変した場合や気になることがあるときには、必ず病院へ連絡してください。
私たち獣医師は飼い主さんとの良好な連係により動物の健康を維持できることを願っています。