時代の変化と教育改革
時の流れは人の考え方をも変化させ、その変化は人の社会環境へ大きな影響を与えます。江戸時代後期から明治時代にかけて、西欧文化の移入による文明開化の大きな新しい波がおしよせ教育界も大きく変化し、町の人たちの子弟教育のための寺子屋、武士階級の子弟のための藩校は学校教育へと統合され、教育新時代が始まりました。『明治の教育改革』であります、その後産業、軍事の発展は人社会へ、教育界へ様々な影響を与えながら時は流れ、第二次世界戦争の終了にともない『昭和の教育改革』が行われました。
昭和20年代から平成にかけての私たちを取り巻く社会の変化は非常に激しいものであり、平成10年頃より現在進行中の'平成の教育改革』へと時は流れてきました。
獣医界の変化も馬医伯楽と呼ばれた時代から軍馬、農耕牛馬のための獣医師へ、その後畜産動物のための獣医師となり、時の流れと共に畜産動物と家庭飼育動物のための獣医師へと変化してきました。
時の流れは自然に対する畏敬の念を薄れさせ、拝金主義の横行、優しさ思いやりの欠如、生命軽視などの社会現象を派生させています。
また核家族化が進み家庭崩壊、学級崩壊と言われ学校教育が混乱している様ですが、私の知る教育者の方々は皆熱心な方ばかりであります。しかし人生において最も大事な小学校教育期間をより豊かなものとするために、経験豊富な地域社会の人々が協力し教壇に立ち児童たちと触れ合っています。教師と家庭と地域住民の協力で子供たちを育てようとの試みであります。地域住民の中に、私たち獣医師も生活しているではありませんか。獣医師として社会貢献度の向上を思うとき、絶好な努力対象であると考えます。今、時代は『学校獣医師』を要望しています。
動物のパワー
人は身の回りの青い空、海、山の緑、川のせせらぎ、庭の石、植栽、花、蝶、小鳥など自然の様々なもの、事象に安らぎを感じ、また畏敬の念を感じとります。健全に発達した人の豊かな感性は自然のなから芸術、科学を醸し出します。強い心を基とし人とのふれ合いに和を求めます。
すべてに発育中の小学校児童は校庭の植栽の緑、そこに集まる虫たちからも多くの事を学ぶことが出来ます。
今までの研究のなかに、人に草花、観賞魚、小鳥、犬を与え、それぞれの反応を観察したものがあります。それぞれにふれ合いの情感が醸され癒されるのですが、犬で最も効果的な反応が認められました。世話をする作業を通して情が深まる訳ですが草花の静的反応に対して犬の反応が最も動的であるからです。また犬の動き、仕草は可愛く相互の信頼を確かめ合う事が出来るからと思われます。
小学校児童に動物、植物の世話をさせることは、努力の継続、優しさ、思いやり、観察力、生死の体験をもとめることです。児童が動物の世話をし、慈しむことから得られるものは児童の心に大きな花を咲かせることでしょう。
心の教育
今、心の教育が非常に強く叫ばれるのは世相を反映したものと思われます。しかし以前より徳育として情操教育、道徳教育の名目で行われていることを考えると教育内容、教育方法の改善が必要なのか、門外漢の獣医師でありますが子育てを終えた一親として考え込んでしまいます。
清廉潔白徳性の高い教育者の姿を学び、黒板と教科書を使用する今の教育法では十分ではないのかもしれません。児童の心は父母の愛、兄弟愛、友愛、師弟愛など多くの愛情、並びに環境により育まれるもの、教えるのではなく自然に授かった児童の心の中にあるものを、豊かに大きく醸し出すことも必要なことであります。複雑化した現世相のなかでの心の教育に児童の感性に直接触れる動物のパワーを利用すべきと思います。
学校獣医師
学校獣医師は市町村から委嘱された獣医師のことで、学校の要請に従い授業等に参画し先生方のお手伝いを第一の目的とするものです。飼育動物の正しい飼い方、接し方の指導、傷病動物の治療も当然行うわけですが、あくまでも学校の要請に対して獣医技能をもって協力いたします。先生、児童、動物と獣医師はふれ合う場を共有して優しさ、思いやり、達成感、生命の尊厳、観察力の向上など、児童の感性を高める手助けが出来ればと思います。
埼玉県獣医師会では、市町村と連携し学校飼育動物の飼育相談や巡回診療などを行っております。
埼玉県内で活動している市町(平成24年度)
さいたま市、草加市、新座市、志木市、和光市、戸田市、蕨市、川越市、ふじみ野市、三芳町、所沢市、久喜市、三郷市の13市町