犬や猫の咬み傷からはパスツレラ菌による感染がおこる事があります

2010年10月18日

パスツレラ症(pasteurellosis)は、WHOが重要な人畜共通感染症として警告を呼びかけ、日本でも厚労省がペット動物(イヌ、ネコ)由来人畜共通伝染病として取り上げ注意を呼びかけている人と動物の共通感染症の一つです。

パスツレラ菌が原因菌としての疾病は多くの動物で見られます。
豚の パスツレラ症として、萎縮性鼻炎、肺炎、多発性関節炎などがあります。
牛のパスツレラ症として、出血性敗血症(日本の家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されており、対象動物はウシ、スイギュウ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イノシシ。幸い日本での発生はない)があります。
鳥のパスツレラ症として、家禽コレラ(日本の家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されており、日本に存在していないといわれている)があります。
ウサギのパスツレラ症としては、鼻炎(スナッフル: snuffles)、肺炎、中耳炎、結膜炎、敗血症などがあります。ウサギは感染すると保菌ウサギとなり抗生物質でこの細菌の増殖を抑える事が出来ますが、症状は再発する事が多く根治は難しくなります。
犬や猫はパスツレラ菌を持っていることが多く、猫はほぼ100%、犬は約75%が口腔内常在菌として保有しています。また猫では爪にも約20%の割合で保菌されていることが確認されています。しかし犬や猫ではほとんど症状を起こしません。まれに猫で肺炎を起こしたり、咬み傷からの化膿症の原因菌となったりします。

近年、日本では人のパスツレラ症(pasteurellosis)の患者発生が増えています。
犬や猫に咬まれて感染する感染症としては、患者数が多いものの一つだと考えられています。犬、猫に起因する人のパスツレラ症では、現在Pasteurella.multocida, P.canis, P.dagmatis, P.stomatis の4種類が原因菌として確認されていますが、このうちP.multocida による感染が主体です。

犬や猫に咬まれてパスツレラ菌に感染した場合には、早ければ数時間で受傷部位が赤く腫れ、痛みや発熱を伴います。近くのリンパ節が腫れることもあります。パスツレラ症での受傷部位の炎症は皮下組織の中を広がり、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれます。 受傷部位が関節に近いときには、関節炎を起こすことがあります。骨に達するような傷であれば骨髄炎を起こします。免疫機能が低下している人では、重症化して敗血症や骨髄炎を起こし死亡することもあります。咬まれなくても、犬や猫との接触によりパスツレラ菌を吸い込んで、呼吸器系で感染して、肺炎・気管支炎や副鼻腔炎などを起こすこともあります。気管支拡張症患者やコントロールができていない糖尿病患者・HIV感染者・悪性腫瘍患者など特に免疫機能が低下している人では、注意が必要です。

感染経路としては、犬、猫に咬まれたり、引っ掻かれたりした傷からの感染の他、口移しなどで餌を与える等の過剰なスキンシップによる経口感染や稀に飛沫感染もみられます。

このようなことから、健康に負荷のある人(糖尿病、肝障害、免疫不全等の基礎疾患)や小さなお子さんは過剰な接触をさけましょう。またペットを寝室に入れない。猫の爪はこまめに切るなどを心がけましょう。口移し等の過剰なスキンシップもよくありません。
万が一、犬、猫に咬まれて受傷した場合は必ず消毒を徹底し、感染の可能性があれば医師に相談しましょう。

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